卵の孵化と無事に育てるには
メダカ飼育で一番つまずきやすく、難しいのは卵から孵化した稚魚の育成かも知れません。初心者の方から一番多く質問されるのは、稚魚が育たたない。溶けていなくなってしまう。なかなか大きくならない。と悩み多き稚魚の育て方です。実はまず大事なのは卵の管理から始まります。
健康な卵は「黄色い色」
しっかりと太陽光、室内の観賞魚用LEDライトの光を浴びて、生まれる有精卵の色は黄色い色をしています。黄色の色は親メダカがしっかりとビタミンBを体内に保有し、産卵しているので表現される色です。われわれ人間と同じようにメダカもビタミンBが不足してしまいますと風邪をひきやすく、抵抗力が弱くなってしまいます。これは親メダカが体に光をしっかり浴びているかいないかで、変わります。
事実、光量の弱いライトでの室内飼育、日陰で産卵したメダカの卵の有精卵は無色透明である事は、事実として確認できています。生まれた時の卵の中にビタミンがたっぷり含まれている卵から生まれてくる稚魚とあまりビタミンが含まれていない稚魚では当然その後の成長にも大きく変わりが出てきます。まずは親メダカの環境をしっかり整え、良い卵からスタートできるようにしましょう。
無精卵は白く濁った色になってきて、放置しておくとカビが生えてきます。そのカビは有精卵にも移ることがあるので、無精卵を見つけたら取り除いたほうが良いでしょう。
孵化と生まれたばかりの稚魚
積算温度250℃(水温×日数)で有精卵より孵化が始まります。生まれたばかりの子(以後針子)はとても小さく体も半透明です。3日目以降ヨークサックも無くなり、口から餌を食べるようになります。メダカは変温動物ですので、生まれた時から水温が高い方が(26℃~30℃)順調に成長できます。まだ赤ちゃんだからと日陰に置いたり、ヒーターの温度を下げたりしてしまうのはやめましょう。特に日陰に避難させたりしてしまいますと、積算温度まで日数がかかり過ぎて、孵化できずに有精卵がダメになってしまう事があります。親メダカと同じ環境であれば稚魚も適応できるので、過保護には気を付けましょう。
いよいよ給餌が始まります。そこでもやはり疑問ができます。先ほど給餌し、飼育容器を覗くと、、そうですほとんど食べていません。これでは心配になります。ですが稚魚は親メダカと違い餌を食べることがまだ下手です。そのため完全浮上性の稚魚用の餌は簡単には水を吸って沈んでしまわないようになっています。ゆっくりと時間をかけて、少しずつ稚魚達は餌を食べていますので、食べていないからとすぐには片づけないようにして下さい。
粉状の稚魚用の餌はほとんど沈まず、そのまま水を含み膨張します。その頃はもうそのエサは食べないので、片づけましょう。また青水で飼育し植物性プランクトンを食べさせたり、ゾウリムシ等の微生物、ミジンコ、ブラインシュリンプ等も併用し、稚魚に与えると、より稚魚の生存率は高くなります。水槽飼育の場合青水は難しいので光合成細菌を毎日少しずつ与える事もおススメです。
品種による特殊な例
特殊な例としまして、アルビノメダカ(目の赤いメダカ)に関しましては弱視の為、ほとんど水面の餌を食べる事が稚魚の内はできません。ですので、生餌を活用しないと、餓死したり、大きくなれない事があります。またメラニン色素の欠乏の為、紫外線に当たると日焼けをして体が溶けてしまいます。孵化後から1㎝程のサイズになるまでは、太陽や強いLEDライトが当たらないように注意しましょう。
稚魚が育ってきたら注意すること
やがて3週間程経つと成長の早い稚魚は1㎝近くに成長します。この頃になりますと稚魚の大きさにもバラツキが出てきます。早く大きくなった稚魚は小さい稚魚を食べたり、咥えてしまったりします。大きさに差が出てきたら、大きくなった稚魚を別の水槽に移していきましょう。
同じくらいのサイズ事の稚魚ではそういったことはおこりませんし、大きな稚魚を移すことにより残った稚魚達もすくすくと育っていきます。屋外飼育の場合は季節により稚魚の成長のスピードが変わります。これは水温の違いです。春生まれの稚魚達は、朝晩水温が下がる為、成長スピードはゆっくりです。成魚になるまで3か月程かかります。夏生まれの子たちは水温が高いので成長スピードが速く、2か月程で成魚まで成長します。夏は稚魚育成に最も適した季節です。
注意点としましては、親メダカよりも稚魚水槽は過密になる為、酸欠等も起しやすかったりします。成長と共に1匹1匹の酸素の量が増えていくため、あまり過密になっている時は稚魚を半分ずつ位に分けて飼育すると良いでしょう。最近の8月の気温は想像以上に高温です。日中は水温を確認し日除けや足し水で水温調整をして下さい。また夏場は稚魚達の天敵となる捕食者も飼育水槽に紛れてきたりします。ボウフラやヤゴ等はメダカの稚魚を捕食しますので、定期的な水交換や発見次第対処する等気を付けましょう。
稚魚水槽の水換え注意点
水交換時の注意点ですが、稚魚は体がまだ未熟なため、網で掬う時などは慎重に掬いましょう。レンゲやお玉、ボウル等を用い水と一緒に移動してあげても良いです。少しでも無理をしてしまうと体が曲がってしまったりします。移動する新しい水の飼育水も元の飼育水と同じ温度で必ず水合わせも行うようにしてください。
稚魚育成難しいですが、コツさえ掴めば誰でも必ず育てることができます。自分で卵から育てたメダカは特に愛着も湧きます。そしてメダカ飼育の醍醐味でもありますので、楽しみながら稚魚育成、頑張って頂きたいと思います。
稚魚の育成でよくあるトラブル・お悩み
生まれたメダカが育たない
メダカ飼育の楽しさは自分で採卵した卵が孵化し、その子たちが次の親になりまた繁殖が出来る。というところが大きな魅力だと思います。メダカは早ければ生まれて3か月程で産卵サイズを向かえ卵を産みます。メダカは寿命が2年~3年と短い観賞魚です。ですので、累代繁殖によりメダカを長く楽しめるように、世代を繋ぐ楽しみがあります。
しかしメダカの稚魚は生まれるけれど、いつの間にか少なくなってしまうので、中々育たないと言う悩みをよく耳にします。それではなぜメダカの稚魚は育たず、いつの間にか少なくなってしまうのか?の疑問を解決していきましょう。
「稚魚が育たない」一番の原因は「餌不足」
実は一番多い原因はエサ不足による餓死があります。稚魚はエサを食べるのが上手ではないので、粒が大きかったり、沈んでしまうエサですと食べられません。これを予防するのは市販のメダカの稚魚用のエサです。浮上性のエサで尚且つパウダー状のエサであれば、時間はかかりますが、稚魚はしっかり食べる事が出来ます。
食べ残したエサは水面に浮いていますので、給餌後1時間程したら取り除きます。これだけでしっかり給餌と水質の悪化も防ぐことができます。油膜が水面に出ることがあるので、キッチンペーパーやティッシュを浮かべ油膜を吸わせて取り除いてあげましょう。油膜を稚魚の水槽に残すと、やがてコケになり水面を覆ってしまい、メダカの稚魚が酸欠をおこしてしまいますので、注意が必要です。
エサもしっかりあげているのに少なくなってしまう原因は他にもあります。
メダカの稚魚をあまり過保護にして、暑いとかわいそうと日陰に置いてしまうと、今度は日照不足、温度不足によりメダカの成長が遅くなり、尚且つ水質の悪化もありメダカの稚魚が病気になり少しずつ減っていってしまいます。メダカの稚魚は体もとても小さいので、病気になってしますと、あっという間に死んでしまいます。日当たりが良い場所で飼育してあげると水温も高く、成長も早まります。真夏の炎天下では遮光が必要となりますが、それ以外の時期はなるべく日が良く当たる場所で管理しましょう。また極端な過密状態では、酸欠も起しやすくなりますので、稚魚の数が過密の時は容器を増やし、メダカを分けてあげましょう。
急に稚魚が減ってしまう、その原因は
順調にメダカの稚魚が育っていたはずなのに、ある日小さな子がいなくなり、数匹しか水槽にいなくなってしまう場合もあります。こうなる原因実は、早く大きくなったメダカが兄弟のメダカを食べてしまう事が原因なのです。メダカは雑食性なので、口に入る大きさの物はなんでも食べてしまいます。均等に育っていけばこういった事は置きませんが、メダカは成長に差が出て、早く大きくなる子と中々大きくならない子の差がとても出やすいのです。
それを防ぐためにはある程度多きなったメダカから別容器に移す選別が必要になります。1cm程に育ったメダカはまだ小さい兄弟を食べてしまいますので、そのサイズを目安に別の水槽に移動させてあげましょう。この時以外にもとても速く泳ぎ、小さな網では中々掬うことが容易ではありません。大きめの網に小さなメダカと共に水面より網が出ないように掬い、そこから大きくなったメダカだけを掬うようにしましょう。容器の端などにうまく隠れる子もいますので、良く探しながら見落としが無いように注意しましょう。また小さな稚魚も近くにいるので、その子達にも気を付けながら選別をして下さい。
一番怖い稚魚の全滅…その原因は
全滅 一番恐ろしい事ですが、メダカの稚魚がある日全滅してしまう事もあります。一番多いのは梅雨明けの真夏の太陽です。梅雨の時期には問題なかったはずの稚魚達も、真夏の太陽に長時間さらされると水温が上昇し、酸欠をおこしてしまい、一容器全滅してしまう事があります。全滅してしまった水槽に指を付けるとまるでお風呂の様な水温、いやそれ以上熱くなってしまっている事もあります。
水質の悪化により水が腐る。 これも全滅の原因の一つです。水が腐ってしまうと、メダカ達はそこでは生きていけず、やはり全滅と言う結果を招いてしまいます。これは水交換等で対処できるようにしてください。
水草の繁殖
ホテイアオイ等を産卵床にしている方も多いと思います。卵がついたホテイアオイや他の水草を移動し、その後稚魚が生まれてきます。水草は水質浄化作用もありますので、とてもメダカとは相性も良く暑い日の日除けにもなりとても良いのですが、暑い季節になると、水草が水面を覆ってしまい、メダカが日照不足なってしまいます。また夜間は水草が水中の酸素を吸ってしまい、酸欠の原因にもなってしまいます。増えすぎた水草は適度に間引き、日照不足と酸欠にならないよう注意しましょう。
異常がメダカの稚魚が育たない主な原因となります。もちろん他にも原因はあるのですが、上記に気を付けてもらうだけでも今まで育てられなかった稚魚が育てられるようになります。
※記事監修 花小屋 店主 戸松具視さん